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最強無敵のお嬢様、魔剣の執事とポストアポカリプスを往く
最強無敵のお嬢様、魔剣の執事とポストアポカリプスを往く
Author: 瘴気領域

第1話 壮大なプロローグですのよ

Author: 瘴気領域
last update publish date: 2026-07-03 12:23:29

 西暦2076年、人類の97%が死滅した。

 原因は2073年に始まる世界――否、宇宙的な異変である。

 わずかな時間を尽くした学者の研究によれば、複数の並行宇宙が衝突したのだと云う。

 地球全体を震度7クラスの地震が襲い、倒壊した街を津波が飲み込み、破局噴火が相次ぎ、ある山は底も見えぬ穴に変わり、ある海は干上がって塩にきらめく砂底を晒した。麦畑は焼け、水田はひび割れ、畑は砂塵に覆われ、人々は銃を取り、ミサイルは煙を引き、原発は放射性廃棄物を撒き散らし、人工衛星は次々と流れ星に姿を変えた。

 天を見上げればもはや星座は意味をなさず、増えた月が玉突き事故を起こして砕け、太陽はまだらに輝き、かつて太陽系と呼ばれた惑星群は数も軌道もわからなくなった。

 それだけではない。

 何処いずこから湧き出した異形の群れが、生き残りを襲った。

 半透明の不定形生物が少女を絡め取り、窒息死させた。

 緑色の肌の矮人わいじんが、欠けた包丁を少年に振り下ろした。

 巨躯きょくを誇る大鬼が電柱を引き抜き、青年を叩き潰した。

 青褪めた貴公子が微笑むと、淑女は恍惚に血を捧げた。

 老いを知らぬ種族が老人を嘲笑あざわらい、木々のかてに変えた。

 酔いどれの髭面が操る兵器が、誰も彼もを肉片にした。

 皮の翼が空を支配し、灼熱の吐息が街を灰燼かいじんに沈めた。

 それだけではない。

 混沌。

 混沌としか形容しようのない何かが、世界をむしばんだ。

 それ・・は人間も、人間でないものも、粘体生物スライムも、緑肌矮人ゴブリンも、食人巨鬼オーガーも、吸精鬼ヴァンパイアも、古樹族アールヴも、奈落鍛冶ドヴェルグも、飛天鱗甲ドラゴンでさえもおかまいなしだった。

 それ・・はあらゆる存在にとって、等しく災厄だった。

 それ・・に対抗するために、あらゆる種族が手を結んだ。

 先頭に立ったのは、最も脆弱と思われた人間ヒューマン

 種族人間ヒューマンの中でも脆弱と思われる、たった一人の少女だった。

 少女には、魔剣が託された。

 不燃の粘体生物スライムが炉を象り、古樹族アールヴが世界樹の薪を焚べ、飛天鱗甲ドラゴンがふいごに吐息を注ぎ、奈落鍛冶ドヴェルグの槌が鍛え、緑肌矮人ゴブリンが呪いを込め、食人巨鬼オーガーの骨で柄を飾り、吸精鬼ヴァンパイアが魂を封じた一振り。

 少女には、あらゆる施術がなされた。

 幾兆もの自己複製型ナノマシンが血管に注入され、骨格は7割が呪言を刻んだ金属に置き換えられ、神経細胞はある種の刺胞生物の遺伝子と組み替えて高速化され、皮膚や筋肉、内臓は可能な限り生体金属と交換、あるいは異種族のそれを移植した。少女という物体のその内実は、機械化人間マシナリーよりもさらに人工で満たされていた。

 だが、少女は少女のままだった。

 切削刃ドリルの如き、金の巻き髪も。

 紫水晶アメジストの如き、紺碧こんぺきの双眸も。

 白磁器の如き、滑らかな肌も。

 どれもこれも、少女のままだった。

 だが、容姿以上に魂が、少女の魂が少女のままだった。

 ――みなさま、決戦ダンスの準備はよろしくって?

 お気に入りのドレスをまとい、

 腰よりも幅広な刃の大剣を掲げ、

 舞踏会に赴くような優美な足取りで、

 世界を滅ぼす混沌に向け、斬り込んだ。

 そして少女は、勇者となった。

 ――――――――――………………

 ――――――…………

 ――……

 ……

 それから、千年の時が過ぎた。

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